
市場は、未来をどこまで知ることができるのか――。
選挙の勝敗、景気後退、企業の売上、災害や政策変更。まだ起きていない出来事について、人々が持つ情報や見通しを取引に持ち込み、一つの価格として表すのが予測市場である。
しかし、その価格は未来を映す水晶玉ではない。価格には予測だけでなく、未来に備えたい人のヘッジ需要、リスクへの態度、資金制約、流動性も入り込む。70円の契約を、そのまま70%の確率と読んでよいとは限らない。
本書は、予測市場を「未来を知るための市場」と「未来に備えるための市場」という二つの側面から捉える。選挙市場や企業内予測市場、イベント契約、AI、マーケットメーカー、規制までをたどりながら、市場価格はどこまで信頼できるのか、同じ契約はリスクをどこまで軽減できるのか、予測とヘッジはいつ両立し、いつ衝突するのかを考える。
市場を礼賛するための本ではない。操作、インサイダー、曖昧な決済条件、薄い流動性といった危うさにも触れ、日本で何を実証すべきかまでを示す。未来を当てる制度としてではなく、不確実な未来について考え、備えるための制度として、予測市場を読み解く一冊である。
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目次
はじめに
序章 未来を知ること、未来に備えること
第一部 予測市場とは何か
- 第1章 未来の出来事を売買する
- 第2章 一つの契約、二つの価値――予測とヘッジ
- 第3章 70円は70%なのか
- 第4章 予測市場は賭博・保険・デリバティブとどう違うのか
第二部 予測市場には何ができるのか
- 第5章 予測市場は、ほかの予測に何を加えられるか
- 第6章 会社の未来を社員に聞く
- 第7章 価格がニュースになるとき
- 第8章 イベント契約はヘッジとして機能するか――実装条件と限界
第三部 市場を設計する
- 第9章 何を予測し、どう判定するか
- 第10章 流動性はどこから来るのか
- 第11章 予測市場の公正性をどう守るか
第四部 予測市場を制度にする
- 第12章 同じ65%、違う制度――未来を数値にする五つのモデル
- 第13章 日本で予測市場を実現するには
